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‪編み物と言葉と材料費‬

by おたかな

‪電車の中で編み物をしているお婆さんを見かけた。姿勢が良く、優しい手つきだった。‬

‪年末に帰ってくるお孫さんに向け帽子を編んでるのかもしれないし、老年ゆえのボケ防止のためにと何となしに手を動かしているだけかもしれない。お金を稼いでやるぞと、毎月第三土曜日の朝方フリーマーケットに持ち込むあの人形のストラップらしきものを作っているのかもしれない。そして毛糸の濃い紫色から推測するに、出来上がったものが私の好みである可能性は極めて低い。‬

だから私はそれを綺麗な出来事として眺めていたわけではなかった。

それでもなんだか涙が出そうになった。‪久々に見る"編む"という行為は、とても丁寧な動作だと思った。‬編むという行為に温かさを感じた。

どういう過程でかはそれぞれだと思うけど、編みあがったそれを目に止め、受け取った人がいつか温かくなることは間違いないように感じた。そのいつかの温度を想像して愛おしいと思った。目の奥のじわりぬるい正体はこいつか。と把握した。

電車から降りて冷たい空気にあたりながら、「この編み物を受け取った人が温かい気持ちになってくれたら嬉しいですね。」とインタビューに答えるお婆さんの姿を想像してみた。

私は言葉を編みたい。押し売りするつもりはないから、たまたま私の言葉を受け取った人が温かい気持ちになってくれたら嬉しい。そういう気持ちで、丁寧に、編むように優しく言葉を重ねたい。

自分の編み物の技術に陶酔していると言われるだろうか。それも構わない。穏やかな顔で、知らん顔をするだろう。だって世の中にニットがいっぱいあることは知っている。私はそんな中の丁寧な手編みのニットを編んでいたい。手袋サイズしか編み上げられないかもしれないけど。誰かの手を温められるなら。守れるなら。私は言葉を編みたい。

姿勢よく、そして優しい顔つきで。

言葉は材料費タダだしってそう思う。

編み物と言葉と材料費
2016.12.29


おたかな
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